●扶氏医戒之略(ふしいかいのりゃく)
医師とはどうあるべきか
扶氏とはフーフェランド Chrstoph Wilhelm Hufeland (1762―1836)という人のことだそうです。
緒方洪庵が彼の著述を翻訳した、その一部がこの「扶氏医戒之略」だそうです。
医師とはどうあるべきかの十二箇条。
ネット上で捜したところ、だいたい二種類を見つけました。
下に各項目ごとにその二種類を並べておきます。
一、人の為に生活して己の為に生活せざるを医業の本体とす。
安逸を思わず名利を顧みず唯おのれをすてて人を救わんことを希ふべし。
人の生命を保全し人の疾病を複冶し人の患苦を寛解するの外他事あるものにあらず。
一、医の世に生活するは人の為のみ、おのれがためにあらずということを其業の本旨とす。安逸を思はず、名利を顧みず、唯おのれをすてて人を救はんことを希ふべし。人の生命を保全し、人の疾病を復治し、人の患苦を寛解するの外他事あるものにあらず。
一、病者に対しては唯病者を視るべし。貴賎貧富を顧みることなかれ。
一握の黄金を以って貧士双眼の感涙に比するに何ものぞ,深く 之をおもうべし。
一、病者に対しては唯病者を見るべし。貴賤貧富を顧ることなかれ。長者一握の黄金を以て貧士双眼の感涙に比するに、其心に得るところ如何ぞや。深く之を思ふべし。
一、其術を行うに当ては病者を以って正鵠とすべし。決して弓矢となすなかれ,
固執に僻せず試験を好まず,謹慎して眇看細密ならんことをおもうべし。
一、其術を行ふに当ては病者を以て正鵠とすべし。決して弓矢となすことなかれ。固執に僻せず、漫試を好まず、謹慎して、眇看細密ならんことをおもふべし。
一、学術を研精するの外,言行に意を用いて病者に信任せられんことを求むべし。
然れども時様の服飾を用い詭誕の奇説を唱へて,聞達を求むるは大に恥じるところなり。
一、学術を研精するの外、尚言行に意を用いて病者に信任せられんことを求むし。然りといへども、時様の服飾を用ひ、詭誕の奇説を唱へて、聞達を求むるは大に恥るところなり。
一、毎日夜間において更に昼間の病按を再考し,詳に筆記するを課程とすべし。
積て一書をなせば,自己の為にも病者のためにも広大の脾益あり。
一、毎日夜間に方て更に昼間の病按を再考し、詳に筆記するを課定とすべし。積一書を成せば、自己の為にも病者のためにも広大の裨益あり。
一、病者を訪ふは,疎漏の数診に足を労せんよりは,寧ろ一診に心を労して細密ならんことを要す。
然れども自尊大にして屡々診察するを欲せざるは甚悪むべきなり。
一、病者を訪ふは、疎漏の数診に足を労せんより、寧一診に心を労して細密ならんことを要す。然れども自尊大にして屡々診察することを欲せざるは甚だ悪むべきなり。
一、不治の病者も仍其患苦を寛解し,其生命を保全せんことを求むるは医の職務なり。
棄てて省みざるは人道に反す。たとひ救うこと能はざるも,之を慰するは仁術なり。
片時も其命を延んことをおもうべし。決して其の死を告べからず。言語容姿みな意を用いて之を
悟らしむることなかれ。
一、不治の病者も仍其患苦を寛解し、其生命を保全せんことを求むるは、医の職務なり。棄てて省みざるは人道に反す。たとひ救ふこと能はざるも、之を慰するは仁術なり。片時も其命を延べんことを思ふべし。決して其不起を告ぐべからず。言語容姿みな意を用ひて、之を悟らしむることなかれ。
一、病者の費用少なからんことをおもふべし。命を与ふとも命を繋ぐの資を奪はば亦何の益かあらん。
貧民に於いて茲に甚酌なくんばあらず。
一、病者の費用少なからんことを思ふべし。命を与ふとも、其命を繋ぐの資を奪はば、亦何の益かあらん。貧民に於ては茲に斟酌なくんばあらず。
一、世間に対しては衆人の好意を得んことを要すべし。学術卓絶すとも言行厳格なりとも,
斉民の信を得ざれば之を施すところなし。普く俗情に通ぜざるべからず。
殊に医は人の身命を委托し赤裸を露呈し最蜜の禁秘をもひも啓き,
最辱の懺悔をも告ざることは能はざる所なり。
常に篤実温厚を旨として多言ならず,沈黙ならんことを主とすべし。
博徒,酒客,好色,貪利の名なからんことは素より論をまたず。
一、世間に対して衆人の好意を得んことを要すべし。学術卓絶すとも、言行厳格なりとも、斎民の信を得ざれば、其徳を施すによしなし。周く俗情に通ぜざるべからず。殊に医は人の身命を依托し、赤裸を露呈し、最密の禁秘をも白し、最辱の懺悔をも状せざること能はざる所なり。常に実温厚を旨として、多言ならず、沈黙ならんことを主とすべし。博徒、酒客、好色、貪利の名なからんことは素より論を俟ず。
一、同業の人に対しては之を賞すべし。たとひしかること能はざるも勉めて忍ばんことを要すべし。
決して他医を議するなかれ。人の短をいふは聖賢の明戒なり。
彼が過を挙るは小人の凶徳なり。人は一朝の過を議せられておのれの生涯の徳を損す。
其の得失如何ぞや。各医自家の流有て,又自得の法あり。慢に之を論ずべからず。
老医は敬重すべし。少輩は愛賞すぺし。人もし前医の得失を問ふことあらば勉めて之を得に帰すべし。
其冶法の当否は現症を認めざるは辞すべし。
一、同業の人に対しては之を敬し、之を愛すべし。たとひしかること能はざるも、勉めて忍ばんことを要すべし。決して他医を議することなかれ。人の短をいうは、聖賢の堅く戒むる所なり。彼が過を挙ぐるは、小人の凶徳なり。人は唯一朝の過を議せられて、おのれ生涯の徳を損す。其徳失如何ぞや。各医自家の流有て、又自得法あり。漫に之を論ずべからず。老医は敬重すべし。少輩は親愛すべし。人もし前医の得失を問ふことあらば、勉めて之を得に帰すべく、其治法の当否は現病を認めざるに辞すべし。
一、治療の商議は会同少なからんことを要す。多きも三人に過ぐべからず。
殊に其人を択ぶべし。只管病者の安全を意として,他事を顧ず,決して争議に及ぶことなかれ。
一、治療の商議は会同少なからんことを要す。多きも三人に過ぐべからず。殊によく其人を択ぶべし。只管病者の安全を意として、他事を顧みず、決して争議に及ぶことなかれ。
一、病者勝曾て依託せる医を舎て,密かに他医に商ることありとも漫に随うべからず。
先其医に告て其説を聞にあらざれば従事することなかれ。
然りといへども,実に其誤冶なることを知て,之を外視するは亦医の任にあらず。
殊に危険の病に在りては遅疑することあるなかれ。
一、病者曽て依托せる医を舎て、窃に他医に商ることありとも、漫りに其謀に与かるべからず。先其医に告げて、其説を聞くにあらざれば、従事することなかれ。然りといへども、実に其誤治なることを知て、之を外視するは亦医の任にあらず。殊に危険の病に在ては遅疑することあることなかれ。
右件十二章は扶氏遺訓巻末に附する所の医戒の大要を抄訳せるなり。書して二三子に示し、亦以て自警と云爾。
安政丁巳春正月 公裁謹誌 緒方章印
下のサイトほかいくつかを参考にさせていただきました。




