●ハードボイルド小説作家・稲見一良
ミステリー小説、時代小説は読まれています。
外国のものではここ十年ほどでは、スティーブン・ハンターの作品が人気があるようです(「極大射程」「魔弾」など)。主人公は一匹狼で巨悪に対して自分の技術をもって、闘うサスペンス小説です。
主人公の名はボブ・リー・スワガー(一度読んだらこの名は忘れ難い印象を残します)、孤独を愛し、普段は引きこもっています。そんな彼が、やむにやまれぬ事情から危機に直面していき、そこをどう切り抜けるかを描いた作品でした。銃社会アメリカならではの小説でしょう。ちょうど西部劇の現代版の趣がありました。
そのハンター作品を読む前に日本のハードボイルド・サスペンス小説で注目すべき作家が登場していました。稲見一良(いなみいつら)です。「ダックコール」(山本周五郎賞受賞)「ダブルオーバック」「ソー・ザップ!」「セントメリーのリボン」など孤高の男の闘いが描かれました。ハンター作品を読んだとき、稲見一良を想起したのでした。CM風にいうならば、男のダンディズムここに極まれり、というところでしょうか。
西部劇「シェーン」の主人公のように寡黙で、男気があり、弱い者の味方という人物にまいってしまいました。これらの小説は稲見氏でなければ書けないものであったかもしれません。最近なら佐々木譲氏の「さらば荒野」というこれまた西部劇そのままの小説にもそれを感じます。稲見氏もこれらに続く作品を期待したのですが、残念ながら亡くなってしまいました。生前、稲見氏にハンター作品の評価を聞きたかったです。死してなお筆者の中で稲見作品は忘れ難い本として刻まれています。




