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2008年07月30日

●近藤ようこ「極楽ミシン」について

漫画はほとんど買わないのに、例外がいます。近藤ようこの作品があれば買ってしまいます。

「極楽ミシン」(新潮コミック)もそうした1冊でした。近藤の漫画には、女性コミック(この名称は好きではありませんが)の書き手として、もうベテランの域に達している人です。この人の作品は、私小説を思わせる、人間の機微が書かれていて、読後感は丁度、小津安二郎や成瀬巳喜男のようなホームドラマの何気ない問題が主人公によって語られる。そんな作品です。

「極楽ミシン」も子どものいない夫婦の話であったり、姑と若い嫁の意思の疎通の問題であったりするのです。印象的なものがありました、子どもがほしい夫婦なのに、出来ずにいたある日、生まれたばかりの子猫を妻が拾ってきて、育てます。妻はその猫を子どものように可愛がり、夫に子どもがいなくてもいいよねなどと言います。やがて大きくなり外国産の毛並みの長い猫に成長しますが、ある日散歩の途中、逃げ出し、そのまま行方不明になってしまいます。そんなある日、公園の茂みにその猫を見かけたような気がしたのです。また別の日、雌猫の近くに生まれたばかりの子猫がじゃれついているのを発見します。子猫は逃げた猫にそっくりでした。そしてその夫婦にも子どもが生まれるという話でした。この作品集には割りに深刻な夫婦や恋人との亀裂が描かれてませんが、他作品には、そうした断絶した親しい間柄の人間の悩みや希望などが、染み込むように描かれています。小説では、単純すぎることが、漫画になって、女性の心理が実にうまく描かれているのです。子ども向けの漫画だけではありません、こういった人間関係の心理の綾さえもが描ける稀有の作家といっていいでしょう。

極楽ミシン (新潮コミック)
極楽ミシン (新潮コミック) 近藤 ようこ


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