●日本が舞台のS・ハンターの小説
スティーブン・ハンターの「47人目の男」(上下・扶桑社文庫)についてです。
スティーブン・ハンターといえば「狩りのとき」「極大射程」などで御馴染みの米国のアクションサスペンス小説の第一人者として人気のある作家です。そう日本でいうと稲見一良の小説を想起させる人です。主人公ボブ・スワガーがいやおうなしに窮地に追い込まれ、そこから脱出し、逆転させていく物語は一度、読み始めるや、ハンターの小説の虜になるのです。それほど面白く、読める小説なのです。特に主人公のスワガーが男のダンディズムというべき、孤高で、筋を通す人物なのが読者を引き付けるようです。先般、「極大射程」は映画化されましたが、スワガーイメージが若いマーク・ウオルバーグという俳優によって演じられたので、若干、違和感がありました。筆者の思うところでは、もう少し渋い俳優が演じてもよかったのではないかという感がしましたが、内容自体は原作に忠実で面白く観ました。
そんなハンターが父親が第2次大戦の英雄であったことの理由から書き始められ、硫黄島での出来事がこの物語に関係してきます。そこで戦死した軍人の軍刀をもって、帰還したスワガーの父はその軍刀を親戚の物置に置いたまま、世を去りました。その数十年後、息子のボブ・リー・スワガーのもとに、日本人が尋ねてきます。その日本人こそ、その軍刀の持ち主の息子でした。その軍刀をたどっていくと…。という話になります。軍刀は実は由緒ある、歴史的な名刀が巡り巡って、軍刀にされたとわかります。その軍刀を狙う、ヤクザ組織とスワガーが対決する話です。ハンターの日本刀に関する知識は半端ではありませんでした。剣道について、日本刀についての知識も日本人の愛好家以外知り得ないこともこの小説には出てきます。冒頭に、日本映画人の名前が出てきます。小林正樹、黒澤明、山田洋次などの巨匠だけでなく、時代劇の秀作を生み出した田中徳三、三隅研二の名も、そのほかの監督名も上げられ、俳優も三船敏郎、仲代達也、勝新太郎、若山富三郎だけでなく時代劇で活躍した俳優名があげられてます。最後に、名脚本家・橋本忍に捧ぐという献辞が出てました。いかにハンターが時代劇に入れ込んだかわかるような気がしました。しかし本書の出来は、残念ながら、「狩りのとき」や「極大射程」と比したら、落ちます。でもハンターが、侍の姿を主人公になぞらえて物語を構築した心意気を良しとしよう、そんな読後感を持ちました。
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